連載「まちのプロジェクト基金ができるまで」その4~伴走支援の役割

2019年5月7日

北海道NPOファンド事務局 高山大祐 

まちのプロジェクト基金は、伴走支援をつけることによって、資金集めの取り組みを組織診断・基盤強化に活かしていくことを狙いの一つとしています。伴走支援がつくこと自体は、クラウドファンディングにおいてもありますが、その目的を組織体制の強化に置くというプログラムは多くはないのではないでしょうか。

こうしたプログラムがうまれた背景には、組織基盤強化というものの効果が、目に見えにくく、実感されにくいという事情があります。またその効果は、ある種のシステム導入や業務フロー改善のような形で残る場合もありますが、知識、経験など人に蓄積される場合も少なくありません。直接の収入につながる取り組みではありませんから、悪くすると、その効果は、スタッフのモチベーション低下によって早々に「蒸発」してしまうことさえあり得ます。

そこで、クラウドファンド助成(事業指定型助成)という目に見える成果目標を加え、これを達成するために、組織体制を見直し、そして資金集め、事業実施に取り組む。すなわち、基盤強化の取り組みを、すぐに実際の事業にぶつけて、成果を実感してもらうことがこのプログラムの狙いとなっているのです。

まちのプロジェクト基金における伴走支援は大きく二種類あり、一つはプログラム全体に渡る支援をすること、もう一つは、組織診断や資金集め、そして事業実施などそれぞれの段階によって求められる支援をすることです。第一の伴走支援者は、申請、組織診断、資金集め計画づくり、資金集め、振り返り、事業実施のすべてに関わることが原則です。必ずしも、高度な専門知識を求められているわけではなく、専門家の協力を得ながら、申請団体とともに、およそ8か月ほどのプログラムを共に歩みます。組織診断や資金集めに関わる伴走支援者は、その分野に経験があるか、ファンドレイザー資格などを持っている方にお願いしています。

どちらのタイプの伴走支援も、持っている知識をいきなりお伝えするのではなくて、申請団体のお話を聞いたうえで、あくまで申請団体がとるべき手段を決めていくお手伝いをします。安心して、じっくりと考えることができる環境づくりを手伝う、といえばよいでしょうか。

生活習慣改善などと同様に、一つ一つを取ってみると、どれも支援者など不要で、自分でできそうなことだと思いますが、1か月2か月自分の意志の力だけで生活習慣改善を続けるのは大変ですから、医療関係者が適宜助言をしながら進めることで改善の可能性が高まります。組織基盤強化も一朝一夕にできるわけではなく、比較的長い時間がかかります。8か月におよぶまちのプロジェクト基金は、自団体の組織を見直して体制・体質を改善したいと考える団体のお役に立つことを目指しています。言い換えれば、「経過を見える化」する組織基盤強化プログラムを目指しているといえるかもしれません。

ところで、伴走支援という言葉、ぴんと来ないという方も恐らく多いと思います。NPO分野以外ではあまり聞いたことがありませんが、徐々にビジネス社会でも聞かれるようになってきたそうです。これを書いている私も、2年前くらいまではその言葉もあまり知りませんでした。伴走してしまうと、対応できる団体数に制約ができてしまうかもしれない、とか、どのくらい時間をかけて、どこまで支援するのだろう、などいろいろと疑問を持ってもいました。今でも、伴走支援者の数は依然として課題だと思ってはいますが、継時的に団体に関わる伴走支援自体は有効なNPO支援の手段だと思っています。

中間支援の関係者は、自然にこうした伴走支援をしていることが多いですが、言葉としては定着していませんし、NPO団体は伴走支援を受けるとか、求めるという感覚もそれほどないのではないかと思います。まちのプロジェクト基金をきっかけに、伴走支援の活用を考える団体が増えれば、と願っています。