連載「まちのプロジェクト基金ができるまで」その5~クラウドファンディングの手法を組織基盤強化に

2019年6月7日

佐藤綾乃・北海道NPOファンド運営委員/NPO運営サポートあの屋代表

「あの屋」では、 ”本来のミッション”に集中できる環境づくり』をミッションに、NPOのバックオフィス支援など運営改善の「きっかけづくり」をお手伝い。旭川を拠点に、活動を展開中!

『クラウドファンディング』という言葉は、それがどういうものなのか説明するまでもなく、すっかり耳馴染みのある言葉になったのではないかと思います。日本では2011年に購入型のサイトが立ち上がってから、急速に広まりました。現在では100社以上のサイトがあり、単なる資金調達のツールとしてだけではなく、マーケティングや投資、ふるさと納税など、様々な形で活用されるようになりました。市民活動にとっては、寄付募集をきっかけとして、活動について発信する、支援者を拡大するために活用することが多いと思います。

『まちのプロジェクト基金』では、クラウドファンディング(以下、CF)の手法を組織基盤強化に活用しようと考えました。そのため、通常のCFとは異なるポイントを明確にし、事前説明会でもお話させていただきました。

募集期間は45日前後の成功率が高い、開始前から綿密な準備を行う、スタートダッシュ・中だるみ期間・ラストスパートという“3つの波”対策が講じられる通常のCFと比較すると、期間は長めの3ヶ月間、“3つの波”対策よりも、取り組みの振り返りや、状況に対応して変更可能を良しとする計画づくりに重点を置いています。そして、伴走支援者・伴走ファンドレイザーを募集し、一緒に寄付募集期間を走り抜けるという体制を作ることで、CFに限らず、ファンドレイジングや組織基盤強化に初めて取り組む団体が、タイムリーなフィードバックを受けやすい、チャレンジしやすい環境づくりを目指しました。

助成審査を通過した2団体による寄付募集は、4月1日からスタートし、募集期間の3分の2が経過しました。2団体とも、CFのような寄付募集にチャレンジするのは今回が初めてで、ミーティングでは思うように寄付が集まらないストレスや、計画していたことになかなか手が付けられない反省がたくさん出てきます。一方で、「活動のことをあらためて話すきっかけになった」という声や、情報発信・広報体制の見直しの機会、身近な関係者が主体的に支援の輪を広げる動きなども見られます。

また、今回の寄付募集をきっかけとした新しいチャレンジが、単に業務負担を増やすことにならないか、寄付募集期間後も使えるツールになるのか、本来の団体の活動に必要なものなのか、という問いかけを常に行うこと、そしてCFのセオリーに囚われないことに注意しています。

私自身は、正直なところCFは好きではありません。「達成まであと○日、あと○○円!」という文字ばかりが目立つ形で、協力のお願いをされることも多く、「なぜ、この活動はCFを行っているのか」「なぜ、CFというツールが必要だったのか」ということが、わかりにくいものが多いからです。

CFにチャレンジして得られるものは、お金だけではありません。地域の活動を、地域の人が応援するしくみやきっかけをつくる。自分たちの活動がこの地域の人たちに理解され、応援してもらいたい。今回の寄付募集に関わる人々が、たくさん悩んで紡いだメッセージに込めた思いや目的を忘れなければ、目標金額を達成すること以上の“財産”が得られると信じています。