[よくわかるNPO実践ガイド] CONTENTS

※発行当時の内容をそのまま掲載しています。役職、肩書き等は当時のものであることをご了承ください。

発刊に当たって NPO推進北海道会議 代表委員 上田文雄
【P.1】   人類史の中のNPO 北海道大学 法学部教授 田口晃
【P.8】   ①NPOって何?
【P.10】 ②NPOと法制度の現状
【P.12】 ③法人格取得のメリットは?
【P.14】 ④法人格取得の要件
対象となる団体
法人となれる要件
【P.17】 ⑤法人格取得の手続き
第一のハードル
第二のハードル
法人格取得のフローチャート
【P.44】⑥法人格の組織と運営
【P.48】⑦会計処理のしかた、事業報告と情報公開
会計処理
事業報告と情報公開
【P.51】 ⑧法人税はかかるのか?消費税の扱いは?
【P.53】 ⑨活動は、組織は、資金は?NPOケーススタディ
市民出資による手づくりの映画館/シアター・キノ
ネイチャーツアーを企画・運営するNPO/NEOS
【P.59】⑩NPO支援の組織と仕組み
NPOサポートセンターINDEX
【P.66】 NPOと北海道自立の可能性  北星大学社会 福祉学部教授 杉岡直人
【P.73】  資料 特定非営利活動促進法全文
【P.88】     特定非営利活動促進法施行規則
【P.92】     特定非営利活動促進法施行条例

 

●編集/小林董信 富塚 廣
●発行者/佐藤 隆
●発行/NPO北海道推進会議
●印刷/有限会社 オフィス・イマージュ

 

P.8  ①NPOって何?

近年、福祉・環境・国際協カ・まちづくりなどの分野で、自発的な市民活動が活発になっています。その活動内容も従来の行政補完型の活動や陳情・反対型の運動から、市民参画型・政策提言型の活動に変化しています。阪神・淡路大震災では1 0 0万人を超えるボランティアが活動したといわれますが、そこでは一人ひとりの活動が効果をあげるためボランティアをコーディネートする市民組織が生まれました。地球温暖化防止京都会議(COP3)では、各国のNGOが国際会議の内外でさまざまな活動を展開し、パートナーとして自国政府の代表団に影響を与えました(ただし日本は例外でした)。このことは、民間非営利の立場で展開される市民活動が社会の中で重要な位置を占めつつあることを示しています。

私たちはいま、未来に向かって解決しなければならない、たくさんの問題を抱えています。環境破壊や地球温暖化、地域紛争や南北問題、そして、食料の安全性や医療過誤、高齢社会、少数者や社会的弱者の人権保障、教育問題など広範多岐にわたっています。
私たちはこれまで、こうした問題は政治や行政が解決すべきであり、企業が人々のニーズに対応すべきだと考えていました。しかし、行政セクタ ーや企業セクタ ーの限界が日々あらわになり、私たちの人生を豊かなものにするための多様な選択肢を提供できないことがはっきりしてきました。例えば、介護保険法が成立しましたが、高齢者一人ひとりのニーズに合った介護サービスを提供するためには、行政や企業では限界があり、市民参画によるケア・システムづくりと運営が不可欠です。震災救援や復興、まちづくりでも市民参画の重要さが高まっています。

そして、こうした今日的な社会的課題を解決していくためにNPOが必要とされているのです。
NPOはnon profit organizationのことと言われています。日本語では民間非営利組織と呼んでいます。もともとはアメリカの法人制度と税制優遇制度を背景に生まれた言葉です。もっともNPOが発達しているアメリカでは、NPOの総数は約120万で、その雇用者は700万人を超えるといわれます。しかも、その組織はボランティアではなく、有給の専従スタッフが運営しているプロフェッショナルな団体が中心です。

前述した社会的必要性だけでなく、専従スタッフのいない団体が多い日本の市民活動団体としては、こうしたアメリカの実態を学んで、NPOへの期待を高めているのです。

NPOの定義は、まだ国際的に統一した定義はありませんが、アメリカのジョーンズ・ホプキンス大学、レスター・サラモン教授は政治団体や宗教団体は含めずに、①公式の組織 ②非政府組織 ③非営利分配 ④自己統治・自主管理 ⑤自発的組織 ⑥公共性をあげています。

よく誤解されるのが、非営利だから利益をあげてはいけない、収益事業をしてはいけないということです。それは間違いで、利益をあげても株式会社のように関係者で分配せず、次の事業や活動に使うということで、収益事業はNPOの活動にとって大切なエネルギーの源といえます。