NODE[NO.0]創刊ゼロ号 |1997年2月1日2月号

特集記事(PDF)

[NODE] CONTENTS

【P.1】「市民自治と民主主義」に貫かれた「新しい社会」をめざして 発刊宣言
【P.2】ガンバレ![NODE] 創刊に寄せての熱いメッセージ<1>

市民活動の広場 forum
【P.8】森を守れ!真駒内の新しい住民運動、行政・議会を動かす 湯浅博夫
【P.12】なぜシェルターが必要とされるのか 近藤恵子
【P.14】厚生行政の腐敗に福祉の現場から抗議の声――札幌で緊急市民の集い 塩見建樹
【P.16】インターネットでなにができるんや 森影依
【P.18】二〇〇二年「第六回DPI世界会議札幌大会」招致に向けて 西村正樹
【P.20】二人のノーベル平和賞「知られていない」東ティモール紛争 高橋奈緒子

NODE CULTURE
【P.22】MOVIE
【P.23】MUSIC
【P.25】BOOK
【P.26】文学散歩

ルポ●共に生きる――福祉の現場から<1>
【P.30】知的障害者施設[あいのさとアクティビティ・センター]

【連載エッセイ】北海道野生動物最前線①
【P.34】エゾシカと車が衝突したら修理代は誰が払うのか 小川巌

特集 政党時代の終わり
【P.36】市民から見た’96総選挙
【P.41】政治が輝く時代とは 中沢孝夫
【P.45】政党政治に対置するネットワーク運動 七里とみ子
【P.48】[市民政党としてのローカル・パーティ]の可能性と日本国憲法 今井弘道

連載[1]
【P.56】汚染大地ベラルーシの悲しみ 菅谷昭

ホットアングル
【P.58】泊3号機アセス着手に対抗し、「住民投票をめざす会」を旗揚げ
【P.59】憲法公布五十周年を記念し21世紀に憲法の心が生き続けることを願って

【P.60】パート相談室

【P.62】自分たちで飛行機を買って千歳-羽田間を半額で飛ぼう! 福木昭夫
市民が自らのニーズに合わせて社会を変革する時代

【P.66】NODE ノード インフォメーション INFORMATION
【P.68】市民中心型社会の構築をめざして [NODE]編集委員会
【P.72】[編集室から]

 

市民中心型社会の構築を目指して    [NODE]編集委員会

いま、私たちは一見、物質的には充足された、豊かで成熟した社会に生きています。しかし、地下鉄サリン事件が顕在化させたのは、私たちの社会の大きな空洞であり、見えない壁、閉塞空間でした。それは「欧米先進国に追い付き追い越せ」という国家目標がなくなり、私たちの社会はそれにかわる新たな目標、理念をいまだ見いだしえていないからです。
しかし、そうした経済至上主義、物質万能主義、科学技術信仰の崩壊は、逆の意味で人々の新たな行動様式を生み出しています。会社員は、サービス残業も厭わず、会社のために尽くして、自分の人生をその出世のレールに描くことをやめ、仕事を見つめ直し、会社の外にも新しい価値観を見いだそうとしています。主婦は妻であり、母親であるという一面的存在から脱却し、家庭の中では共同生活者として、また外に向かっては地域や社会へのさまざまな働き掛けを始めています。働く女性は、能力に対する正当な評価とその発揮の場を求め、若者は、阪神大震災のボランティア活動や「よさこいソーラン祭り」への参画など、地域社会の連帯や新しい人間関係の構築を開始しています。
それらは、他からの強制や拘束をきらい、自分で考え選択し行動すること、自己の尊厳を大切にするからともいえます。人々は、「自由な個」であることと自己表現、自己実現に価値を見いだしているのです。

私たちのまわりには、たくさんの問題があります。環境破壊や地球温暖化、オゾン層破壊であり、地域紛争、南北の貧困格差、政治的抑圧、食料危機、人権、エイズ・麻薬問題、民族・女性・こどもや障害者など少数者の問題、高齢社会や都市と地方の格差、核•原発問題、基地問題、生命操作などです。こうした問題に多くの市民が、NGOやNPO(民間非営利団体)、その他ボランタリーなグループ、また自立した個人として行動し、主体的に取り組んでいます。阪神大震災のボランティアや北京女性会議への自発的参加、まちづくり、市民事業やワーカーズ・コレクティブ、市民オンブズマンによる官々接待・不正経理の摘発、住民投票に示される直接的な政治参加などを見るまでもなく、国家の枠組みや政府・地方行政の力だけではこれらの問題解決は不可能であり、市民の行動の有効性が現実のものとなっているからです。

私たちはこれまで、こうした問題は政治や行政が解決すべきものであり、解決してくれるものと考えてきました。しかし、政治と行政の限界や無力があらわになりました。また、政・官依存こそが官僚機構の肥大化と腐敗、官僚支配と利権政治をもたらしてきたのです。逆に、市民の側が公共的なサービスを組織し、提供できれば、その分だけ官僚機構はスリムになります。まちおこしやNPO、NGOは、公共性の機能を市民が自主的・自発的に担おうとする運動であり、そのことを通じて市民自治や民主主義を実質化させる運動といえます。このことは、プロに「委任する政治」から、「市民が直接的な政治の担い手になる時代」の到来を示しています。
今日の成熟した社会の中で、人々は政治的判断能力を獲得し、政治や社会に対する批判意識を育てています。こうした市民の参画を抜きに、政治は成立しにくくなっているのです。これからの政治は、市民が中心となって担っていかなければならないのです。これを「市民の政治」の時代といいます。

昨秋実施された総選挙の結果は、社会の閉塞惑を払拭するには程遠いものがありました。大きな変化の前に、既存のシステムが役に立たなくなっているのに、新たな理念の下での日本の社会システムの再構築がいまだ見えないからです。国家の破綻を鮮明にしてくれたのが、沖縄県の大田知事でした。機関委任事務の執行を地域利益を盾に拒否することで、「国益」の絶対性を引っ繰り返してみせたのです。また、新潟県巻町の原発立地をめぐる住民投票も「地方益」と「国益」の関係を逆転してみせてくれました。このことの意味することはかなり大きいと思います。国家の巨大だった権力の一部が、すでに地方や市民へ、国際機関へとすでに流出を始めたのです。
そうした国家の限界は、政治の限界であり、政党とその公約の限界といえます。新しい柔軟なシステムヘの転換が求められているのは、国家であり、官僚機構であり、政党であり、明治以来の中央集権システムのすべてなのです。
こうした大きな転換期の時代認識を欠如した永田町の「政界再編」、既成の政治勢力の離合集散は、私たちとはまった<無縁のものであり、歴史の中で消失していくだけのことです。私たちは、地域から、生活の場から、労働の場から「市民が中心の社会」「市民の政治」を構築していくことが可能な時代に生きているのです。北海道の、全国のさまざまな市民の活動、住民の活動が、現実として政治を変え、地域社会を変えつつある事実、そしてそうした力を持つようになってきていることは、革命的な現実なのかもしれません。

いま、北海道、全国の市民の活動、住民の活動が直面する課題こそ、「新たな社会」を創りだす突破口となりうるのだと思います。言葉を変えれば、既存の政治行政システムを地域社会・市民の側から相対化し、市民サイドから「新たな社会」を再構築していくということです。
そして、[NODE]はそうした市民の活動を支援していく雑誌です。
「住む場、働く場、生きる場を組みなおしていく、行動する市民」のネットワーク・マガジンです。
さまざまな市民・住民グルー。フ、NPOやNGO、行動する市民の誌上ネットワークをつくり広げ、その交流や活動を通じて、積極的に課題を発見し、議論をまき起こし、政策化していきます。
行政・企業と市民をネットワークし、情報公開を徹底させ、三者の協働による政策形成を媒介していきます。

発行体制は脆弱で、経営基盤はないに等しいのですが、「新しい社会」の姿が少しでも見えるまでは発行し続けたいのです。いかなる政党や組織にも依拠せず、市民一人ひとりに支持され、支えられる雑誌にしていきたいのです。[NODE]はみんなで創る雑誌です。市民活動のツールとして、大いに活用されることが、本誌の目的です。いつまで発行できるか分かりませんが、楽しく編集していきます。

[NODE]
発行日 1997年2月1日

●編集・発行/[NODE]編集委員会
●デザイン・レイアウト/クライ・アント
●印刷/株式会社そうご印刷

[NODE]編集委員会/富塚廣・松井豊・片桐真・桜井雅章