事業名:NPO団体の発信力向上の支援

法人格の有無に関わらず、発信力が弱いNPO団体が多い。自身が代表を務めるNPO法人でも実践しながら、他団体、特にデジタルネイティブが不在の団体への支援を行うために、Webマーケティング、SNS運用などのスキルを高める。

助成使途:「Withマーケ」を受講しながら自身が代表を務めるNPO法人で実践。他団体のSNS班に参加したり、独自にヒアリング調査を行い、他団体が開催するSNS講座などに参加しながらスキルアップを行う。来年1月頃より他のNPO団体への共有計画案、トライアルを実施する。

インタビュー:高橋亜由美さん(NPO法人あえりあ 代表理事)

 


■現在の活動を教えてください

有償ボランティアの経験からNPO法人を立ち上げ

私は、学生の頃に脳性麻痺の方の有償ボランティアを、看護師になってからは知人の気管切開をしていたお子さんに有償ボランティアをしていました。小学校入学というタイミングで、家族の方が突然病気になったため、お子さんの小学校への付き添いの人手が必要になりました。そのご家族の友人知人の看護師が20名ほど集まり、ボランティアナースチームのリーダーとして、小学校中学年までお子さんと家族のサポートを行った経験があります。

その後も、医療・福祉の制度上、現場で働いている人たちが行うことができない、また当事者が助けを必要としていても現行サービスのみでは担いきれないニーズもあり歯がゆさを感じていました。
NPO法人の方や音声SNSのclubhouseで色々な方に相談をし、2021年7月にNPO法人あえりあを設立しました。同年8月より「さぽんて」というwebサービスをクラウドファンディングにて多くの方からの支援を得て開発し、始動しました。医療・福祉において人手を必要とする依頼者または施設と、看護師・社会福祉士など医療、福祉の国家資格保持者が直接繋がることのできる「懸け橋」のような役割になっています。訪問介護・看護ではなく「有償ボランティア」としてお手伝いするので、従来のサービスよりも広範囲なサービスを行えたり(医療的ケアは医師からの指示書が必要ですが)、依頼者と有資格者が直接連絡を取ることで意思決定が自身で行える所が特徴的です。現在は主に障害児の家族の利用が多いですが、今後は高齢者へ向けてもお伝えしていく予定です。

その他の活動は、高齢者向けに介護予防教室やセミナーを行なったり、今後は他団体と一緒に、中学・高校生向けに医療・介護の職種について知ってもらう機会もつくる予定があります。

■小林董信基金の活動

人と人の「懸け橋」になれたら

札幌でも様々なイベントが現地開催されるようになり、他団体との交流をもつことができるようになりました。そんな中で、「広報はどうやってやっているの?」「SNSってどうやって使うの?」など他団体の方から聞かれることがあり、すごくいい活動をしていても発信の弱い団体が多いと感じました。

当団体はTwitter、instagram、Facebookを使用しています。他団体の方と活動や交流をした際、相手がアカウントを持っていないためにお互いのメンションができず、その団体と私たちのそれぞれのフォロワーへ活動が伝えることができないもどかしさがありました。

また、学生ボランティア、社会貢献をしたい若者が増えていると感じます。でもボランティアをしたい人もSNSやインターネット上に情報がないとその人へ届かない。情報と団体が繋がっていないと感じました。いつもお世話になっている方へできることで協力したいと思っていますし、一般的なSNS講座ではなくその団体に合わせたSNSの使い方などを伝えていきたいです。

■1年後の活動(自分自身)に対する希望はありますか?

現役看護師を続けながら、NPOの活動で制度の隙間へアプローチしたい

現在も現役の看護師をしています。“元看護師”ではなく“現役看護師”が発信することにも意味があると考えているため、働き方を都度検討しながら続けています。私自身の趣味と仕事が一体化していて「個人の希望」というものがあまりないのですが、NPO法人あえりあが始めたサービス「さぽんて」は多くの人に知ってほしいし、使用できる地域の拡大をしたいと思っています。今回の小林基金のSNSのサポートについては、オンラインとオフラインをうまくそれぞれの良い所を使用しながら、お互いの助け合いができる場が広がっていければと思います。

■現在、活動を進めるにあたって課題に感じていること、不安に感じていることはありますか?

活動資金の確保と、リアルな人との繋がりを作りたい

活動資金の確保と資金計画と事業計画のバランスでしょうか。事業を計画するにあたり、思考が非営利活動にガッツリ寄ってしまうと、活動資金はどうする?となるので、活動を続けるためにも資金計画と事業計画のバランスをうまく取っていきたいです。

また、コロナ禍であったこと、私自身が看護師として働いていることもあり、今まであまり実際に人と出会う場に出向いていませんでした。そのためSNSでの支援者は増えましたが、人を集めて介護教室やセミナーを行う際に、実際に顔が見えて繋がっている人があまりいないことに気づきました。人との繋がりがあれば、口コミやチラシを置けたり、スポンサーになってくれる所などの情報を紹介してくれたりなどあるかもしれないと思っています。そういう繋がりをつくっていきたいです。

 

■小林董信基金に対する期待はありますか

戸惑いと期待

個人への支援をする助成金があまりないと思っていますので、この基金は貴重なものだと思っています。私自身、小林基金には団体(NPO法人)と個人の両方で申請をしていてました。先ほども述べましたが、NPO法人を立ち上げた後は「私の個人での活動」で何かをするという視点が今まであまりなかったので、個人の申請で内定は受けたけれど、どこか団体での活動というイメージが頭にずっとあり、先日伴走者の方と話した際にはっきりと認識しまして、少し戸惑いもあります。伴走支援、どのようなサポートが得られるのかなあという期待もあります。

 

■小林董信基金への寄付者へのメッセージ

先輩たちが道を作ってくれた道の上に、私たち世代がいる

私たちがSNSなどを使って活動をしていることに対して、NPOの先輩達からは「自分たちが5年10年かけてやってきたことをあなた方は1年でやっている」などと言われたことがありました。

私たち世代は、NPOの先輩たちが、今まで道もなく草木が生い茂ったような場所でずっと活動をしてきて道ができた、その上に活動をさせてもらっているという意識があります。

道を作ってきてくれたにも関わらず、次世代の若手が活動することを支援したいという言葉を小林董信基金の募集要項で読み、実際に基金へ寄付をされた方がいて、私もその意識を大事にしたいと思うし、時代に合わせて変化しながらその気持ちを守りながら活動をしていきたいなと思いました。

■伴走者より

今回、高橋亜由美さんの伴走者のNPO法人Bonos杉本です。普段は釧路市男女平等参画センターで働いています。高橋さんのNPO法人の発信力向上支援という活動を選んだ理由として、私自身も日頃からセンターの情報発信に課題を持っているため選びました。どの地域のNPOの方々も周知活動や活動の発信は課題だと思っています。高橋さんの活動から地域のNPOが繋がっていき、一緒に課題解決に向けて活動できたらと期待が高まります。これから一緒に学べればと思っています。よろしくお願い致します。

伴走者:杉本順子(小林董信基金 助成選定委員/NPO法人 Bonos)