事業名:「安心できる住まい」「美味しい食事」「自分らしく働ける仕事」誰もが福祉(幸福)を享受できる地域共生社会モデルの構築
「誰にでも優しいユニバーサルセンターいんくる食堂」をつくり、地域にある様々な課題解決に取り組んでいくと同時に地域住民がお互いで支え合う地域福祉の仕組みづくりとその考え方を発信し、様々な社会資源を活用しながら福祉事業と民間事業を融合した地域共生社会モデル構築を目指します。
助成使途:「誰にでも優しいユニバーサルセンターいんくる食堂」の改装費用及び運営費用
インタビュー:NPO法人コミュニティシンクタンクいんくるらぼ 山村哲也さん
■現在の活動について教えてください
人と建物が、僕と安平を結んだ
「誰にでも優しいユニバーサルセンターいんくる食堂」を4月2日にオープン予定で、「食と福祉」をテーマにした多機能型の飲食店にすることを目指しています。建物は、農福連携の事業をしていることで町から無償で借りることができました。地域食堂とか子ども食堂もやりたい。地域課題を解決していくというのを軸にした法人なので、町民同士で支え合う福祉の仕組みもつくりたくて、困りごとの受付もしています。
安平町は、追分・安平・早来・遠浅地区で構成されていますが、早来と追分には人口が集中し、安平・遠浅のほうは閑散としていて、高齢化率が相当高いところなんです。そんなところで飲食店するの?みたいな話もあるんですけど、逆にそういうところで何か結果を出せたら、過疎地とか関係なくなるなと思っていて、チャレンジしていきたいというのが今の思いです。
生まれは北海道なんですが、30歳の時に家族で沖縄に移住して15年程いて、3年前に北海道に戻ってきました。地域共生社会をつくりたくて、僕のイメージでは札幌ではなく地方だなと思っていました。札幌近郊の田舎を回っていて、たまたま安平町の道の駅に来たときに、なんかここでやれるかも、と思ったんです。僕は安平町を知らなかったので、知人に安平町の政策推進課長さんを繋いでもらい会いに行ったところ、安平町を盛り上げようと一生懸命な人で、オールウエルカムで受け入れられ、その場でNPOの立ち上げを提案してくれて設立までの全面的な協力があったんです。課長さんがいたから今があると思います。
「美味しい食事」「安心できる住まい」「自分らしく働ける仕事」の3つがあるとだいたい人って幸せになると思っているので、この三本柱で法人事業をしようと思っていて、最初は追分地区でグループホームを建てる予定で出資してくれる人もいたのですが、建築費が一気に高騰して収支が合わなくなり、見合わせたんです。そんな時、この建物が2年程空いていることを知り、所有者の町に交渉して借りることになったんです。
■地域共生社会を目指したいと思ったきっかけは?
支援が行き届く福祉を、民間の力で
沖縄で初めて福祉の仕事を経験し、制度の中で働いたことで制度の狭間にいる人たちが見えてきて、支援を必要としている人に必要な支援が行き届かなければ福祉じゃないと思ったんです。そこに僕の興味がいったものですから、何とかするためには福祉事業所にいてはできないと思い、独立しました。国の政策を待っていても先細りになっていくのだから、じゃあ何とかするために民間で福祉というのをつくれないか、地域共生社会をつくろうと考えたのがスタートです。
飲食店の売上で支援が必要な人たちの雇用をつくったり、困りごとを解決する活動に繋げていきたいんですよ。やっぱりある程度の対価がもらえたうえで活動をするべきだと思っていて、その形ができれば、高齢の方でも時間が空いてるときに活動してもらって千円、2千円が払えるようになればと考えています。そうすると、やりがいとかいろんなことが広がってくるだろうし、ボランティアに頼ってはやりたくないと思っています。
■1年後、自分自身の活動に対する希望はありますか?
食堂を拠点に、課題を解決する方向に進んでいたい
まずは食堂の運営が経営的に安定することです。運転資金が潤沢にあるわけじゃないので、今は僕がシフトに入らないといけない状況ですが、そうなると法人のやりたいことが難しくなるので、僕が抜けても人を配置して運営できるような形ができたらいい。可能になれば営業時間を長くして、地域の人が集まれるようにもしたい。
一番理想的なことをいうと、地域の人がここを使ってくれて、僕たちとコミュニケーションをとる中で困りごとや社会的な課題を話せたらいい。そこから解決する方向に向かうことができると、ここの役割を果たせるのかな。そして収益が生まれて、なかなか社会一般的には働けないような人たちに雇用のステップとして関わってもらう。農業や飲食店の掃除など裏方の仕事もあれば、接客したい人もいるだろうから、職種は増やしていきたい。そういうことが小さくでも生まれてくるといいなと思っています。
■現在、活動を進めるにあたって課題に感じていること、不安に感じていることはありますか?
初めての起業チャレンジで、資金集めの大変さを痛感
一番の課題はお金の部分です。当初見込んだ運転資金も融資が100万円程減っていて。どこかでお金を工面する活動を僕がしなくちゃならないんだけど、そこに時間が使えないことも不安です。今までは中間支援の仕事をしてきたから、事業をすることは僕にとって新しいチャレンジ、未知の世界なんです。
■小林董信基金に対する期待を!
実績のない人たちにも支援を続けてほしい
スタート時に実績がなくても応募できる助成金、それを待っていたんです。大きな助成となると1年の決算報告がいるから、実績が2,3カ月のような僕たちが応募できる事業を必要としている人は少なくないと思います。
■寄付者へのメッセージ
生きている限り、思いを繋げていきます
寄付っていつも思うんですけれど、すごく思いが入っているだろうし、使うほうも大切に使わないといけないなと思っていて、何に使ったら大切に使うことになるんだろうとか、そんなことをずっと考えていました。とにかく結果を出したいですよね。それで何か社会が変わるとか、より良い社会になっていくということが使命かなと思っていて、それで恩返しが足りるかっていったらそれもわかんないんですけど、僕もそこにもう足を踏み込んだので、多分活動する限り、僕が生きている限り、そこをやっていくんだろうな、やっていかなきゃいけないなと思っています。
本当に、こういった寄付をしてくださる方がいるから僕たちが事業できたりするので、感謝しかないです。逆に僕もしっかり運営できるようになったら、そういうところに寄付したり、人を育てたりとかしたい。僕もまだ1年も経っていませんが、スタートアップが大変なのはわかるから、思いがある人たちにお金を出すことができるような事業に成長させていきたいと思っています。
◆伴走者より
小林基金個人助成にかける思い
私は札幌市に勤務しながら各方面のNPOで活動をしていましたが、30代半ばでNPOの世界に飛び込みました。その頃、小林さんを含めていろいろな方に応援していただいた結果、今の自分や活動があります。知識は一人で学べても、組織の経営や、活動に人を巻き込むことは、実践がなくては決して身に付きません。まずはトライしてみること。恥をかいたり、誰かを怒らせたり、もしかしたらそんなこともあるかもしれませんが、その中で人も団体も社会も成長するものです。頑張ってください。
伴走者:坂本純科(小林董信基金 助成選定委員/NPO法人北海道エコビレッジ推進プロジェクト 理事長)