事業名:みんなが見守るひとりの空間~ミラ小個(ココ) 個室プロジェクト~

地域の様々な団体、行政、住民などがあたたかい輪でつながり、助けがほしいと声をあげられ、必要な時に最適な支援を受けることができ、必要とされることの喜びを知り、そして地域全体が生き生きと輝けるような社会をつくるため、「みんなの居場所づくり」を地域ぐるみで運営しています。子どもたちと地域の未来を考え思いやりの輪をつなぐ活動として、おもちゃ図書館・多世代交流ひろば・レンタルスペースなどなど、さまざまな活動により楽しい支え合いを実践しています!

助成使途:どんな人でも落ち着いて、安心して過ごせる個室を造るための費用(スロープの設置、窓の交換、老朽化した床暖房の撤去、電気工事、ユニット部屋の設置など)

インタビュー:NPO法人ミラココ 下山絵衣子さん 荒川共栄さん

下山さん(左)と荒川さん


■現在の活動について教えてください

誰でも来ていい、実家のような第3の居場所づくり

子どもたちやその家族・地域の方々がつながりを持てる拠点「ミラココハウス」を週3日、開放しています。手伝ってくれるメンバーは16名いますが、難しい案件はほぼ私たち2人で対応することが多いですね。ハウスには1日3、4家族が来てくれて、「ちょっと聞いて~」と一人で来る方や「何か手伝うことある?」って来てくれる方、学校が早く終わったからと子どもがたくさん来るときもあります。
あと、学校や家と同等に当たり前の自分の場所として通って来ている子も多く、そういった子たちには活動を一緒に手伝ってもらっています。学校や家でまだ活躍の場が見つけられないというふうに感じている子だとしても、自分の得意なこと好きなことを発揮できる活動だととっても活躍するから、家庭や学校以外の大人から認めてもらえたり、褒められることで自信がついてくるということがあると思います。私たちはミラココハウスのおばあちゃんで、実家のような感覚でいつでも遊びに来ていいよ、みたいな関係でやっています。

豊富町には支援を受けながら頑張っている子どもがたくさんいます。学校の環境は苦手でも、ここでは障がいがあろうがなかろうが、何の隔たりもなく一緒に遊んで楽しく過ごしていて、お互いを知る機会でもあって。できる、できないじゃないインクルージョンな場所として社会に出るためのプラスになればと思って活動しています。

コロナ禍になり、その影響でちょうどミラココが計画していた第3の居場所づくりが頓挫して、親子さんはずっと家にいなきゃならないというような状態になって、町の施設は全部閉まり、特に新しく越してきた人はどことも繋がりがない状態に陥りました。それで、今こういう時こそ支え合いが必要だと思い、コロナ禍でも親子さんの息抜きに一件ずつ対応しました。そして、借りていた建物(ミラココハウス)を購入、改装するためにクラウドファンディングに挑戦したんです(2022.6月)。全国的な応援が多く、豊富温泉で関わり「豊富にお世話になったから恩返しを」という方や、応援者がSNSでどんどん広げてくれて、500万円の目標を達成することができました。田舎では、こういった動きに参加することに恥ずかしくて積極的になれない方もいて…。外からの応援や成果が上がってくることでみんな入りやすくなるだろうから、うまくやっていけたら、変わっていったらいいなって思っているんです。

 

■活動を始めるきっかけは?

居場所がない子どもたちの居場所

私は学童保育の指導員をしながらここに関わっていたんですけど、学童に居づらい子どもも中にはいるんです。豊富には学童、保育園、小中高が1カ所ずつで、当然そこのルールは1つしかないんですよね。だから、そこにいられない子たちがいけなくなってしまうとなると、お母さんも仕事を辞めなきゃいけない。すごく悪循環になってしまうんです。それで、他にいられる場所がないかなという思いもあって親の想いでつくったのがこの場所なんです。ここを立ち上げる前に活動していた、生きづらさを抱える子どもを育てる親の会で頑張ってくれていた人たちが今一緒に活動してくれていて、その力が大きいです。

■小林董信基金の使途を教えてください

障がいのあるお子さんのお母さんと相談をしたり、「個」の空間を必要とする人にも落ち着いて安心して過ごしてもらえる個室をハウスの中に設置します。どの年代でも、障がいがあってもなくても、みんなの中の「個」の空間を必要とするときがありますよね。必要な理由は様々ですが、近隣市町村で誰もが利用できる個室を提供している場所は意外となくて、自宅や学校や職場で苦しい思いをしている方がこんな場所があると知るだけで少しでも安心して暮らせる理由の1つになったらいいなと思うんです。

 

■1年後の活動に対する希望はありますか?

収入の核となるものを見つけたい

助成金を一番の軸にしてしまうとダメだと思っていて、収入を得る核があり、この活動ができて、助成金で少し助けてもらえるくらいがいいと思うのですが、ではこのまちで何が核としてできるのかというのが難しい。でも、活動を続けるなかで考えていきたいと思います。

 

■現在、活動を進めるにあたって課題に感じていること、不安に感じていることはありますか?

医療、相談機関との信頼関係を持ちたい

親子関係や家のことで悩んでいたり、うちに逃げてきた人もいて、そこは信頼関係で個人的に対応するのですが、行政でも完全に対応ができないので、そこをサポートできるように私たちが支援してくれる相談先と繋がりを持ちたいです。私たち第3者が間に入ってやり取りをしたり、公的機関の時間外や休みのときに対応することが必要な場合もあるのですが相談機関との信頼関係がないとうまくいかない。オーソドックスじゃないのが、支援の難しいところです。

医療と繋げたい方々もいるんです。実際に繋がってはいるんだけど相談内容がうまく伝えられない、理解されない。または本人も支援を受け入れることを拒否してしまう。きっと精神的、先天的な悩みを根っこに抱えてる方も多いと思うので、やはり医療も両立しながら、うまくサポートしていかないと何にも変わらないよねっていうのが課題としてあります。
家族がサポートできたらいいのだけど、それが難しくて孤立しちゃっている方々もいる。そういう方もここに来て、ふっと少し緩んで、人の話が聞けるキャパがちょっと広がったりとか、ただ一人で悶々としているよりは、解決はしなくても心が健康でいられる状態まで進められたらいいかなと思っているんです。
親御さんの問題にしても、子どもさんの問題にしても、困ってるのには原因があるからで、その原因はどこにあるのかがわかると相談すべきところに繋げるのですが、どうアプローチすると本人が受け入れられるのかも難しくて。この課題は、みなさんどうしているんでしょうね。

■小林董信基金に対する期待を!

持続可能な活動を支えてほしい

今回の助成は、伴走支援があるところがポイントでした。課題もたくさんあるので、その相談先になって助言をいただけるのが心強くて、応募させていただいたんです。運営の収入源は会費と寄付のほか、委託販売している作品などの手数料ですが、賛助会員さんが少なく、継続して寄付活動を支えてくださる方が増えたらいいなと思っているので、その方法なども教えてもらえたらうれしいです。

 

■寄付者へのメッセージ

私たちの活動をわかってくださったことが喜びでした

ファンドや財団などの助成はまだ条件を満たせなかったりで、一歩踏み込めないことが多かったんです。それで、独自でやろうとずっと続けてきたんですが、今回はわかってもらえるんだっていうのをすごく感じて、ボランティアの人たちも手伝いに来てくれる子どもにとっても飛躍的な喜びでした。
私たちは、ほっとけないとの思いから、困っている人がいたら見ないふりができずに活動を続けています。地方ならではの課題を抱えているのは私たちだけじゃないと思うので、どうかこれからも見守っていただきたいです。

◆伴走者より

小林董信基金個人助成にかける思い

ミラココさんの活動を知って、何だか懐かしい気持ちがしていました。
自分が20年以上前に地域に気軽に集まれる場所を作り、いろいろな人たちとつながった時と成り立ちがよく似ていたからです。伴走支援の担当になり、リモートでお話を聞いてますます活動動機や目指すところも時代や場所が違っても共通することがあると身近な感じ「これは現場に行かなければ」と思いました。
私が住んでいる釧路から豊富町は約450キロ離れていて、遠いとは分かっていながらも、私の活動のきっかけになった車いすの長女も連れて、ロングドライブで出かけました。
ミラココさんは想像通り、私たちが活動し始めたときの雰囲気に似ていて、ごちゃごちゃといろいろな人が何となくやってきて、私たちのような謎の視察グループも違和感なく溶け込み、初めて会ったのに初めてではないようなアットホーム感、これぞ市民活動の原点的なものだなぁと思いました。
そして、そうした地域ニーズに応えようとすると収入源に困ることも同じです。今回の小林董信基金を足掛かりにして、さらにステップアップしてもらい(というより、ステップアップするだろう)と確信しています。
私は活動初期のころ、お金もない、人もいない、資源がまだまだ乏しい時に困っていることを言いふらしていました(言いふらし作戦)。ミラココさんも困った時にはぜひ、大きな声で「困っている!」と発信してもらえたらと思います。

伴走者:日置真世(NPO法人北海道NPOサポートセンター 理事/NPO法人地域生活支援ネットワークサロン 理事長)