事業名:多胎児育児支援事業の開発
多胎児育児を行なう家族たちが楽しく育児をするために、オンラインやリアルでも交流を行なう中で、子育ての悩み相談ができ、一生涯の仲間が見つけられるようなコミュニティーをつくります。
助成使途:
1.3歳くらいまでの多胎児を育児中の親を対象に、多胎児育児経験者から体験話を聞けたり、個別相談ができたりするオンラインの子育て相談会を毎週開催
2.実際に集まっての子育て相談会を各月週末に開催し、多胎児育児当事者のコミュニケーション、相談の場を作るとともに、父親の育児参加も促す
3.年次時期イベント(クリスマス、ハロウィン等)に合わせ、多胎児同士や親たちのコミュニケーション、友達作りができる双子イベントの開催
4.多胎児同士や親たちが横のつながりを築ける、「北海道双子祭」を5月に開催する予定であり、その予算の一部に使用予定。
インタビュー:NPO法人道産子ヒーロープロジェクト 黒田朋樹さん
■現在の活動について教えてください
コロナ禍の中でNPO法人設立、多胎児育児の奮闘、自分たちの手でどうにかしたい
当団体は2015年から任意団体として、幼稚園、保育園、小学校にて、忍者ショーやヒーローショーを通して交通安全、食育、環境教育等を題材に出前授業やイベントを展開してきました。また、地域の町内会や企業からイベントや海外のイベントにも呼ばれ出演し、そうしたイベント出演時のグッズ収益を主な原資に運営を行なっていましたが、コロナ禍でイベントがほぼ10割減ってしまい、金銭的に厳しい状況に。かねてからスタッフたちに団体運営の参加意識をもってほしい、会費を払い活動に参加する意識をもってほしいと考えていたこともあり、2021年1月にNPO法人を立ち上げました。
プライベートではコロナ禍の中家族が増え、2021年に双子の子どもが誕生しました。私自身、双子ですが生まれた子供たちも双子でした。多胎児育児経験者の私の父母から双子の育児は大変だと聞いていましたが、実際に双子の親を経験し、大変さを理解しました。私たちはもともと常にプラス思考でハッピーな夫婦でしたが、双子が生まれてのから初めての育児に奮闘し、私の妻は育児に結構疲れてしまい、私自身も大変さを経験し、支援が必要と感じました。
コロナ禍以前は地域の多胎児育児サークルのような、子供を遊ばせるスペースがあり、子供のお母さん達がその場に来ている先輩ママ達に気軽に悩み相談ができる地域の場所がありましたが、コロナ禍ではほとんどの時期でサークルの活動が無くなってしまいました。私の子供達より3、4歳上など少し年齢が離れている多胎児育児の先輩ママ達に出会う機会はありましたが、直近の先輩たち(1、2歳上の子どもたちがいる先輩ママ達)になかなか出会う機会がなく、その世代の人達は僕たちが断続的に経験したように育児の相談が誰にもできなかったのだと理解しました。
多胎児育児は、新生児から幼稚園に入る頃までの年齢が結構大変だと思います。かつ、初めての育児(第一子、第二子)で育児の経験もない中、子供の人数が多い(多胎児である)ということが大変さを助長していると思います。親1人で多胎児を一度に見ることが大変なので、外出することすら億劫になりましたし、このように思う親は多いと思います。統計にあてはめると現在札幌市には1年で100~120組くらいの双子が産まれているようですが、多く見積もって同世代の双子がいる家庭は20~30組くらいしか出会えていません。多胎児育児をしている親たちで集まった時に、自分達の多胎児育児の中での悲惨な経験等の話は自慢話に成る程、盛り上がる話題です。多胎児育児当事者達が子育ての話や悩みなど、自身の話をできる場所がないことは課題であると思います。
行政の子育て支援に相談をしても、回答内容が多胎児育児には当てはまらず、私たちは歯がゆい思いをしてきました。例えば、新生児に沐浴をする際、第1子で育児経験がない中でどのように行なうか等考えると思いますが、多胎児は2人子供がいるので、1人を沐浴させている間、もう1人はどうするか等の課題があります。行政の子育て相談がうまく機能ができていないと感じるので、私たちでスムーズにしたいという思いがあります。
私には双子の弟がいます。子供の頃は常に家に遊び相手がいて楽しかった記憶がありますし、私と弟は仲が良く、双子でデメリットを感じたことはありません。しかし、双子の父になってから読み込んだ書籍や研究論文などでは思春期に突入し、だんだん個人の個性や能力において、お互いの得意なこと・不得意なことなどが分かり始め、双子とはいえ全て同じ人間ではないという現実を知り、お互いが辛くなる気持ちになることも少なくないと知りました。統計的に兄弟の個性や能力をお互い気にし、仲が悪くなることがあるようです。
仲の悪い双子は、個人の個性や能力において、お互いの得意なこと・不得意なことなどを自身で比べてしまったり、まわりに比べられて気にして仲が悪くなっている傾向がある。双子、多胎児の成長における心理状況や、統計的なことも今後、多胎児育児コミュニティで共有していきたいと考えています。
■1年後の活動(自分自身)に対する希望はありますか?
多胎児育児という大変な育児を、楽しめるマインドになる家庭を増やしたい
コロナ禍が落ち着いてきたので、以前から地域や企業などに向けて行っていた忍者ショー・ヒーローショーイベントの依頼も、園・学校・施設からの依頼も増えそうな予感がしています。当団体はもともとショー等のイベント出演や園・学校・施設訪問を行なっていた団体ではありますが、今後事業の一つとして多胎児育児へ向けた活動を並行して行なっていきたいです。
将来的に北海道双子協会のようなものを立ち上げるという構想があります。多胎児育児オンラインコミュニティ―を作り、札幌や北海道で成功例を作りその経験から得た知識や活動などを他の地域の参加者に伝えていき、道外も含む各地域にもそうした多胎児育児支援を目的とした組織が作られたり、そこへの協力支援体制構築し、NPO法人の立ち上げ方法や横のつながりの作り方などの支援もゆくゆくはしていきたいと考えています。多胎児育児という大変な育児を、楽しめるマインドになる家庭を増やしたいです。
■現在、活動を進めるにあたって課題に感じていること、不安に感じていることはありますか?
誰も疲弊せずに活動を続けたい
初期費用の不足が今の課題だと思います。オンライン相談会では1回の相談会に4人、月に4回(週1回開催予定)なので、合計で16人の先輩ママさんに参加してほしいと考えています。16人いれば誰かが急に来られなくなっても他の人に頼め、誰も疲弊せずに活動を続けるために謝礼金を支払いたいと検討しています。
もともと自分達でイベントを作ってきたので、構想力・実行力などがある団体であると思っています。活動資金があれば現在構想している事が実現できると考えていますが、始まりは助成金を使用しながら開始し、会員を増やしていき、ゆくゆくは自走したいです。
■小林董信基金に対する期待
人と想いを繋いでほしい
当団体の活動へ対する想いを色々な所に繋いでほしいです。私たちに必要な人を繋いでもらったり、私たち自身で繋がれたり、人脈が増えることによって自分達の活動の広報等も期待しています。
■小林董信基金への寄付者へのメッセージ
生活クラブの思い出と、実現させたい熱い想いを実行に移すきっかけとなった
今回、小林董信基金に応募する際、小林董信氏の経歴を読み、驚きました。私はずっと生活クラブのユーザーです。生活クラブは母の味であり、子供のころから慣れ親しんだ味でした。成長し、母から料理のレシピを教わり自分で作ってみましたが、母の味になりませんでした。ある時に生活クラブの食材を使用して作ったところ、母の味が再現できました。小林さんが生活クラブを立ち上げてくれたことにより、丈夫な体に成長できました。
また、小林董信基金の募集要項を読んで、実現させたいと思っていた今回の事業や、事業に対する熱い想いを思い出し、実現させようと思うきっかけになりました。実際に助成先に選ばれ、とても感謝しています。
■伴走者より
道産子ヒーロープロジェクトさんのテーマを拝見した時に、増えつつある子育て支援の中でも、ニーズにマッチングしないこともありそうですし、多様な社会課題に向き合うことで、同じく困っている方に声が届くといいなぁ…と率直に思いました。
本事業を通して、意欲のある団体さんと一緒に考える機会をもらえたことは自分にとっても気づきにもなりそうですし、代表の黒田さんが活動をしていけるように一緒に考えさせてもらいたいと思っています。
伴走者:廣島悠作(小林董信基金 助成選定委員/NPO法人 Bonos 代表)