報告 認定NPO法人セミナー「取得後の取り組みを考える」

2018年4月4日

2018年3月15日(木)北海道NPOファンドは、北海道NPOサポートセンターと共催で、「取得後の取り組みを考える~認定NPO法人セミナー」を参加10人で開催しました。このセミナーでは、認定NPO法人格をいかにして活用するのか、実際に遺贈や寄付の提案を受けた場合にどうしたらよいのか、何に気をつけたらよいのか、などについて意見交換を行うことを目的としました。はじめに弁護士の今野佑一郎氏より話題提供として「社会貢献活動と法律の関係 ~「取得後の取り組みを考える」~」についてお話をいただきました。認定NPO法人の税制優遇措置、NPO運営における社会的信用の重要性、寄付と法律の関係、寄付集めにおける組織基盤整備の必要性、寄付者の親族など関係者への配慮、遺贈と相続について説明していただきました。とくに一度失った社会的信用を回復することの難しさと、地道な組織基盤の整備について強調されていたのが印象に残りました。

次に、昨年エクセレントNPO大賞を受賞した認定NPO法人アルテピアッツアびばいの加藤知美氏より事例発表をいただきました。北海道初の控除対象非営利活動法人の指定を受けて、その後認定NPO法人になった経緯について、また取得後のフォーラム開催などの取り組みについてお話いただきました。課題としてはふるさと納税とのすみ分けを挙げられました。ふるさと納税経由でもアルテピアッツァびばいに寄付が可能であり、むしろ税制上のメリットは大きいなど、すみ分けや差別化が課題と述べられました。今後に向けては情報公開や寄付者に対しての説明、お礼など、改めてコミュニケーションを強化すること、IT活用で寄付者の利便性を向上することに取り組みたい、認定自体で寄付が増えたというよりは、一つの区切りとして、組織として一段を上ったと感じていると述べられました。
後半の意見交換会では、まず本日ご参加の認定NPO法人の方に、現状と課題をお話していただきました。
「認定になってよかった、という実感はあまりないが、寄付をお願いしやすくなったと感じている。」
「私たちは素人の集団だった。信頼される団体になるために、法人化も行った。認定になったことで、更新というのが次の目標となり、組織づくりに活きている。」
「認定を取得して、大きく運営を見直して新たに出発しようとしている。取得してよかったと思う。遺贈に関心があったが、難しいと思っていた。ただ、今日の今野弁護士のお話は参考になった。一般的には信用は上がると思う。可能性がある団体は認定取得を目指すだろう」
「NPOも認定NPOも知られていないのが課題。知られたとしても寄付にはつながりにくい。できれば企業にアピールしたい」
「認定についての啓発が北海道NPOファンドの役割かもしれない」

加藤さん「啓発パンフレットがあるけれども、北海道としての取り組みも必要。活動分野も異なるなかで、どう認定というものを伝えていくか。発信と同時に、個々の団体の活動、信頼される存在になるような情報発信が大事だと思う」

参加者の声

「認定は遠い話だと思っていた。事業型福祉NPOとして、寄付という発想にはなりにくかった。制度だけで運営していくのも厳しい。何か違うことをしなければと思う。打開策はないかと常々考えている。人材流出も深刻だ。特に訪問介護が厳しい。生き残る道を見つけたい」
「遺贈という部分ではないけれども、寄付という部分では、こんなことやってるから協力してよ税制優遇があるよとアピールしやすいと思う。」
「遺贈のことで気になることが。3000円で100人以上にするには細かく分けなければいけないのか。ということを考えたりする。福祉系NPOとくに介護分野はどんどんつぶれている。なんとか認定法人格を介護・福祉で使えないかと考えている。建物を維持・管理するための寄付を募るとか。いいお話はたくさん伺うが、ご家族のことを考えると受けきれないのではと不安な面もあったが、法律相談をもっとうけていきたい。」
「16年前にNPOを始めた。社会的信頼とコンプライアンスを再認識した。会員への活動の説明が必要と感じた。」
「認定制度の活用。うまく使う必要がある。1団体だけで取り組むのは難しい。NPO側がどう使うかを議論する場が必要。」
「いろんな制度がつくられ複雑化しているが、理解すれば使い道が見つかることもある。推進会議やファンドが問題提起して考えていくのが重要だ。」
「福祉学校の生徒が減った。私たちのところの障がい者をそこで働かせて欲しい。」
「認定NPO、条例個別指定と北海道の指定制度の相関関係が難しい。自治体としても積極的ではないのかもしれない。」

セミナーの締めくくりとして、今野さんは、「遺贈寄付は切り出しにくい話かもしれないが、選択肢として示すならよいかもしれない。弁護士には気軽に相談してほしい。これは法律相談かな?と思ったら、それを弁護士に相談してもらったほうがいい。」加藤さんは、「いろんな活動の人が苦労しながら運営している。自分たちの活動にも参考になった。横のつながりの大切さを認識した」と述べられました。北海道NPOファンドは、今後も認定制度や資金調達事例に関わるセミナーを開催していく予定です。なお本セミナーは平成29年度 独立行政法人福祉医療機構 社会福祉振興助成事業の助成事業として北海道NPOサポートセンターと共催で実施しました。(報告・高山)

(「平成29年度 独立行政法人福祉医療機構 社会福祉振興助成事業」の助成を受けています)