代表理事 田口 晃

2018年1月5日

「北のNPO基金」の母体である「北海道NPOファンド」は、もともと越智喜代秋さんの遺贈を原資に1999年に立ち上げられた「越智基金」から出発しています。越智さんの遺志は非営利市民活動を支援して、北海道を元気にしたいというものでした。当時の世界、日本、北海道はといえば、大きな変動期にはいっていました。政府・行政の役割が問い直され、限定され、代わって市場での「自由」な企業活動が称揚される一方、その営利一辺倒の活動の限界も指摘されたのです。そこで、もう一つの活動の仕方、非営利市民活動、日本ではNPOに注目が集まったのでした。権力を媒介に税を集めて配分する政府・行政、利潤の最大化・極大化をめざして営利活動を営む企業にくわえて、さまざまな社会的価値を使命・ミッションとして実現したい人たちの非権力的・非営利市民活動も大切だ、というわけです。実際これからの地球人類世界は政治社会、経済社会と非営利活動中心の市民社会という3タイプの社会の組み合わせで動いて行くほかないことが21世紀にはいってますますはっきりしてきました。

ところで、非営利市民活動の資金源は会費、事業収入とならんで寄付が柱の一つになっています。そのことを越智さんは知悉しておられ、遺産の一部を寄付してくださったことでした。その後、幸いにして、日本でも寄付に対する理解が深まり、災害支援は勿論のこと、それ以外にも、様々な人々の思いを実現させるために、多様な寄付の形が模索されてきたことは皆さんよくご存じでしょう。当「北海道NPOファンド」にもいろんな方から寄付を頂くようになり、ありがたいことでした。さらに学問の分野でも、寄付・贈与の特別な性質をめぐって文化人類学や社会学の研究が深められ、いまでは、近代資本主義以前からあって、さらに将来それを越える人類史的な射程を持ち、即物的な売買行為や占有では満たされない深い満足をもたらす現象であることも判明しつつあります。

昨年、札幌市から認定NPO法人に認めて貰ったのを機に、わたしたちは「北海道NPOファンド」を再編成の上、「北のNPO基金」として改めて出直すことに決めました。新しい基金は、寄付者の方々と、非営利活動を実践されている方々の多様、多彩な思いや夢に対応できるよう、例えばクラウドファンディング的な枠組みを取りこむなど新味を加え、さらに、みなさんのご希望やご期待にかなった新たな展開もできるよう工夫を凝らしています。皆さんに寄付してよかったと思っていただけるような運営をめざし、皆さんと一緒に北海道、日本、世界を元気にして行く一助になればと、一同念じている次第です。
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