2020年越智基金・市民活動支援基金助成に寄せて 選定委員長 田口晃(NPO推進北海道会議代表理事)

2020年6月19日

新しい生活スタイルに向けて

選定委員長 田口晃(NPO推進北海道会議代表理事)

新型コロナウィルスの影響で、市民活動に携わっておられる皆さんも活動が制約され、仕事や生活の変化を余儀なくされていることと推察します。さて、2020年度の越智基金による助成が動き始めますのでお知らせいたします。この間、コロナ禍のなかで医療関係者を中心に過労で困憊される方や、雇い止めや失職で困窮する人が大量にうまれる一方で、新しい生活スタイルというものが唱えられ、試行されてきました。万事にスピードを少し緩め省エネで地球のことや少し質素に暮らすことを考えたり、新旧の生活困難に対してお金の集め方やら支援の仕方で新たな取り組み方を考えたり、仕事以外の生きることの意味や楽しみの発見に注意を向けたり、してきたわけですね。たしかに新しい生活スタイルに改めて立ち向かう時期がきたようです。社会が多様化し、様々な暮らし方が増えることが、物質的な豊かさにとどまらない本当の豊かさを生み出してきたことを、私達はこの20年間、多様なNPO活動の展開を通じて経験してきました。その方向へもう一段階踏み出そうというわけです。

休眠預金の活用も実際に始まりました。NPOの利用できる資金が増えたのは喜ばしいことですが、事はそれに留まりません。実は改めてNPOにとってお金とは何かを考えさせてくれる機会でもあります。コロナ対策の経済政策もそうです。お金はまわさなければ意味がない。この発想はしばらく前にNPOの世界で検討や実験がなされたエコ・マネーと共通なのです。さらに、コロナ対策の10万円配布はほとんどベーシック・インカムと呼んでよいやり方でしょう。物の生産は地球環境や資源との関係で頭打ち、しかし、既に生活の必要分は満たされている。配分の仕方を工夫すれば世界全体がそれなりに暮らして行ける水準に人類が達した、という条件のもとで出てきたのがベーシック・インカムのアイディアでした。

お金や経済を含めた広い視野、遠くまで届く視力を養って想像力を伸ばしましょう。そうして、これまでは思いつけなかった生き方を発想し、NPOという活動の仕方とつなげていくことで、様々な新しい生活スタイルを模索して行こうではありませんか。

越智基金・市民活動支援基金